ボツ原稿その1「命を大切に」

もしあなたが住宅ローンの返済に困り、仕事がうまくいかず、恋に破れ、人生に絶望したとしても、線路に身を投げるのはやめた方がいい。
とりあえず、白浜の三段壁に行ってみるべきだ。
そして、崖から頭を出して下を見てみるとよい。勇敢なあなたでも怖いよおおおおと声が出るだろう。ここから身を投げれば絶対助からないと確信するだろう。
壁に体をぶつけ、海に落ちて行く自分を容易にイメージすることができるだろう。
もう一度考え直そうと深呼吸して周りを見渡すと、数々の自殺を思いとどませる立て看板が目に入る。田舎に残してきた両親の顔を思い出し、不覚にも涙がこぼれるだろう。
先ほどの恐怖と郷愁が絡み合い、とりあえず、家に帰ろうという気持ちになって、帰り道はすがすがしいものになるに違いない。
三段壁の恐怖に負けず身を投げてしまったらどうするのだ、とお怒りの方もあろうかと思うが、そこまで決心が堅いのであれば、死んで正解なのではないか、と思うのは私だけであろうか。