食事中に読むのはやめた方がいいかも。


夕方、食堂でサンドウィッチを喰っていると、山犬君のサンドウィッチのレタスに緑色の虫がいた。
それは、まだクネクネと動いていた。
山犬君は「あ、虫が」と言って、食堂のオバちゃんのところにそれを持って行ってかわりのサンドウィッチをもらった。
オバちゃんが「あら、すいません」と大きな声で言うのが聞こえた。
冷静さを失ってしまった、と山犬君は後に語ったのだが、私にはとても落ち着いているように思えた。
自分のにも虫がいるんじゃないかしら、と思って厳しくチェックしながら食べた。
「加熱していない食い物ってよろしくないよね」
「虫がはいっていたら、加熱するしないの問題ではないぞ」
「なるほど。虫を加熱したらヘンな臭いがするかもしれないし、生のままがよかったのかも」
「しかし、よく気付いたね、酔っていたら間違いなく喰ってしまっていただろう」
「確かに。でも気付かないのなら、喰っても問題ないかも」
「子供の頃、栗を食っていたら、栗の中に虫がいたのでそれ以来栗が嫌いになった」
といった会話をした。
また、
「知らずに喰ってしまって、笑った時に歯に虫がついている、というのは、どうかね」
という意見も出た。


昔、吉野屋の牛丼を喰っていたら噛み切れないものがあったので口から出したら、それは、バンソウコウというかバンドエードというか怪我した指に巻かれていたと思われる汚いテープだった。
吉野屋の店員は「申し訳ない。お代はいりません」と言った。
おいおい、そういう問題ではないだろう、と店員に詰め寄ったところ、友人のキャタヤマに止められ、大人しく帰った。
その前に行った居酒屋で、隣で飲んでいた大学生に、自分達は男二人で飲んでいるくせに、「君たちのグループには女の子が一人じゃないか。それもイマイチな感じの」と言いながらからんでしまう、という失態を犯して、キャタヤマに「お前はアホだアホだアホだくだらんヤツだ」と説教されて元気がなくなっていたので、キャタヤマの言うとおりにしたのだった。


という話を思い出したのだが、あんまり関係ないかも、と思って、山犬君には言わなかった。


おお。かわいそうな山犬君。
彼はしばらくレタスを食べる事ができないであろう。