言ってはならないという気持ちが強すぎてつい言ってしまう、ということは実際にあるようです。
河合隼雄の名著「コンプレックス」で、次のような事例が紹介されています。

ある女性が恩師と久しぶりに会う事になり、待ち合わせをした。恩師はかなり遅れてやってきた。恩師が現われ、「やあ久しぶり」と言った。
これに対しこの女性は、「長らくご無沙汰しております」と言うところを「長らくお待たせ致しました」と言ってしまった。
彼女の中である種の分離が生じていて、一方では待たされて心外だと思い、もう一方ではそれを受け入れようとしていたのだが、前者が反逆して思いがけないことを言わせたのである。