120分テープ

小学生6年生のとき、担任教師のトシユキが、教室に私物の小さなラジカセを持って来て、いいだろう、と自慢気に見せびらかした。
その態度がムカついたので、トシユキがいないスキにそのラジカセの録音ボタンを押して、猪木コールを録音した。


何度も巻き戻して聴いているうちに、テープが伸びて、音が変わってきた。
入っていたのは120分テープで、120分テープはとてもテープが薄いので、巻き戻しや早送りをしてはいけないのである。
「いーのーきー、いーのーきー」
と録音した私の声は、テープが伸びたことにより、
「いのき、いのき」
と超早口になった。


担任教師のトシユキが激怒したことは、言うまでもない。
大人気ない教師だった。


テープが伸びると何故早口に聞こえるのか?
これについては、いまだに分からないのである。
というか、真剣に考えたことがない。