第二回「紫陽花」

そこには女がいて、ジャガイモの皮をむいていたのだ。
吉岡には妻どころかセックスフレンドどころか普通の友達もいないので、これは見知らぬ女ということになる。
吉岡は驚きのあまり軽く失禁し、高三の春に母親に買ってもらったタケオキクチのトランクスが少し濡れた。
「小便漏らしたの?匂うわよ」女はそう言って笑った。
女には前歯がなかった。
<続く>